徴用工問題とかは結局感情論になっちゃうよね。

2020年12月2日

徴用工問題って、結局行き場のない議論になっている気もします。

日本はもう一切責任を負う必要がないんだという人の主張の根拠となっているのが、俗に言う「日韓請求権協定」。

wikiによれば、

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(ざいさんおよびせいきゅうけんにかんするもんだいのかいけつならびにけいざいきょうりょくにかんするにほんこくとだいかんみんこくとのあいだのきょうてい)とは、1965年に日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(日韓基本条約)と同時に締結された付随協約のひとつ。日韓請求権並びに経済協力協定[1]

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

という長ったらしい名前の協定。

根拠となる条文は以下の通り。

1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

そしてこの協定の中には、

この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。

という文章もあります。

話がややこしいのは、国民の権利を国が制限してしまってよいのかという点。

確かに日本という国と韓国という国の間では、お互いに請求しないよと協定を交わしてしまったとしても、被害を受けた(?)韓国民の権利はどこへ行ってしまうのかという点です。

これについては、wikiが当時に状況として、

・国家がどのような場合であっても個人の権利を消滅させることはできないという主張をするのは難しい
・政府が日本に再度法的な被害補償を要求することは信義則の上で問題がある
・韓国人にあったとしても、1965年の協定に日韓相互放棄したことによって再度補償要求になる日本への請求権行使は難しく、韓国人個人の請求権は韓国政府に対してになる

という解釈を2005年になされていたと記載があります。

まあこの辺は解釈論の話ですから、微妙なわけですが・・・・・

法理的な考え方をしてしまえば、国と国との間の決まり事は、

一般の条約の国内法秩序への編入方式には、国際法に直接的な国内的効力を認めず国内法での別個の立法措置を必要とする変型方式(イギリス、カナダなど)と、国際法にそのまま直接的な国内的効力を認める一般的受容方式(アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、日本など)がある[4]

ということで、アメリカや日本的な考え方をすれば、国内法と同等の効力を有するとする見解もありますが、さて、韓国ではどうなんでしょうね。

韓国の裁判所からすれば、法的な観点からして、国民の権利を国家が左右するのは民主主義の根本に反しますから、日韓請求権協定なんかに縛られないとするのは、少しは分かる気もしますが、一番責任を感じて、対処しなければならないのは韓国政府だと思うのですが・・・・・

「個人の権利はどこへ行ったんだ?」「国家間の約束はあったけど、韓国内の国民の権利をどのように処理していくか?」という点については、当然韓国政府が考えるもんだろうと思って、協定を結んだ日本なわけですが、韓国政府は裁判所に丸投げなんだから困ってしまいます。

協定の文章からすれば、外交ルートで話し合いなんてしょうけれど、それも今一。

考えてみれば、韓国の裁判所も、韓国民間人の権利の請求のために、日本国から取るべき権利を、日本の民間(企業)から取ろうというのですから、ぐるぐるっと回っておかしな話なことに気がつかないのでしょうか?

取れるところから取れ?ですか?

なんだかなあ。

こんなことを書いているのも、先日以下のようなニュースを見たからな訳でして・・・・

徴用工問題では、日本政府こそ「国際法違反」を犯している

この人の文章の書きだしてぶっとんでいるのが、

だが同協定によってさえ、元徴用工が人権救済を求めて日本企業に賠償請求する権利は、放棄されていない。同協定を通じて放棄されたのは外交保護権であって、日本企業に対する個人の請求権ではないというのは、韓国大法院のみならず日本政府、最高裁の認識でもある。

徴用工問題では、日本政府こそ「国際法違反」を犯している

というものです。

協定の文章の引用が間違っていなければ、「両国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」とあるわけですから、権利を主張することは可能でも、さすがに「請求権」はないでしょう。

もうここから躓いていると、当時の協定はなんだったの?という世界です。

で、続いてこの方の次のセンテンス。

 だが同協定によってさえ、元徴用工が人権救済を求めて日本企業に賠償請求する権利は、放棄されていない。同協定を通じて放棄されたのは外交保護権であって、日本企業に対する個人の請求権ではないというのは、韓国大法院のみならず日本政府、最高裁の認識でもある。
 あるいは、日本政府が「国際法違反」とくり返す際、「条約法に関するウィーン条約」を念頭においている可能性もある。その第26条には、「効力を有するすべての条約――ここでは日韓請求権協定(杉田注)――は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない」と規定されている。
 だが、請求権協定に関わる上記の解釈において、日韓両政府に相違はないとすれば、韓国が同協定を「誠実に履行」していないと、つまり条約法条約第26条に、ひいては「国際法に違反している」と言うことはできない。

もう無茶苦茶です。

同協定が外交保護権だけを放棄したものであっても、「解決済み」と協定して内容について、政府が「条約を誠実に履行しない」、つまり韓国国内で解決しようとしないことが、「国際法に違反している」わけです。

もちろん個人的見解としては、国が個人の権利を侵害して、条約を締結してしまうことについては、問題があると思いますが、既に締結されてしまった協定を蒸し返すなら、外交ルートを通じてしなければならないでしょうし、国内の権利云々という話をするのであれば、国内でせざるを得ないと思うのですが。

これに関して調べていて、またロジックのぶっ飛んだブログを書いている人がいたので、参照しておきます。

しかし、日帝強制動員問題が「日韓請求権協定で、完全かつ最終的に解決済みである」というのは、あくまでも日本政府の主張にすぎないものであって、それは韓国大法院の判断を拘束するような「客観的真実」では決してありません。

「徴用工判決は国際法違反である」という日本政府の主張はデタラメだと言っても過言ではない。

協定が日本政府の主張だというのであれば、まず協定は破棄すべきでしょうし、現在において破棄されているという情報を知らないのですが・・・・・・もうこれを言ってしまえば、条約の意味ってなんなんでしょうか。

また、日本政府は、日帝強制動員問題が「日韓請求権協定で、完全かつ最終的に解決済みである」理由として「日韓請求権協定で日帝強制動員被害者個人の請求権が消滅した」ことを主張していますが、しかしこれは「徴用工判決」後の2018年11月14日の衆議院外務委員会で河野太郎外相(当時)がした「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」という答弁*1と矛盾します。

「徴用工判決は国際法違反である」という日本政府の主張はデタラメだと言っても過言ではない。

だからこれも、「個人の請求権が消滅してない」ということが、イコール日本・日本民間企業へ請求して良いかどうかというのは、それこそイコールではないわけです。

日本VS韓国では解決してしまったことにしましょうというのが協定であって、韓国民間人個人の請求権までは、明確にしているわけではないというだけのことです。

で、そこから先はもう解釈論でいくら、言葉にしたところで解決しません。

徴用工問題の請求権の範囲と、日韓請求権協定の請求権の範囲が違うんだと言われれば、もうこれは水掛け論以外の何物でもありません。

で、この方のブログは最後は、日本の過去の負の遺産なんだと・・・・・・。

この論調でいえば、記憶が残っている限り、何百年でも何千年でも、権利を主張できるようになってしまうのでしょうね。

確かに日韓請求権協定で片を付けてよいのかという議論はあるとおもいますが、そんなことはなかったとか、それは範囲に入っていないからという議論をしていけば、もうその先は、水掛け論です。

ということで、この問題は、結局のところ感情論なのです。

なんだかなあ。

感情論になると、折り合いがつくところまで、時間がかかるので、個人的には嫌な話です。

また、この方(以下参照)の主張は、韓国の法体系を知っていれば、もう少しうまく話し合いが出来るのではという流れで書いてありますが・・・・・

現在の大韓民国憲法の前文では、「3・1運動によって建立された大韓民国臨時政府の法統と(中略)正義、人道及び同胞愛により民族の団結を強固にし、すべての社会的弊習と不義を打破し」と書かれており、かつての日本による統治を否定することが、国家の正当性につながっているのである。
 実際にそうした考えが明らかにされた憲法判例として、2011年3月31日に、「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法(親日派財産還収法)」に対する合憲決定(判決)が挙げられる。盧武鉉政権時代に制定されたこの法律では、日本統治時代に日本に対して協力的であった者の子孫から土地などの財産を事後的に没収できることを定めていたため、法の遡及効の禁止の原則への抵触が問題となった。だが憲法裁判所は、憲法前文の精神から親日財産を遡及的に剥奪できるのは予測可能であるとして、合憲としている。したがって、かつての日本による統治に対する強い否定こそが、むしろ大韓民国という国家の正当性につながるのであり、アイデンティティであるといえよう。

韓国法から考える、近年の日韓関係の齟齬について

いやいや、これを知ったら、余計ヒートアップしないか日本人は。

つまり、「法の遡及効」を認めてしまう案件が、「日本による統治」を否定する案件ならOKということでしょ。

ってことは日韓請求権協定なんて、遡及効を認めて破棄ってことでしょ。

こんなことを認める国と、協定なんて結べますか?

韓国では、条約と法律の優先順位について、「国会の同意を得た条約は法律と同一の効力を有し、法律と抵触する場合は新法優先・特別法優先の原則により優先が分かれる」(成樂寅『憲法學』(法文社・2015)318頁(原文は韓国語))と解釈されており

韓国法から考える、近年の日韓関係の齟齬について

とこれも結構びっくりなわけですが、結局日韓請求権協定なんて、新しく国内法を作ればいつでも、ちゃぶ台返し出来るわけで・・・・薄々そうなんじゃないかと思っていたけど・・・・・・。

韓国では民事や刑事事件については法院(日本でいう裁判所)が、法律の違憲審査は憲法裁判所がそれぞれ裁判を行い、大法官(最高裁判所裁判官)ならびに憲法裁判所裁判官の任期は、それぞれ6年となっている(韓国憲法第105条第1~2項、第112条第1項)。諸外国と比較すると、アメリカの連邦最高裁判所裁判官の任期が終身、日本の最高裁判所裁判官の任期が定年まで保障されているのと比べて、韓国の大法官と憲法裁判所裁判官の任期は極めて短い。任期が短ければ、それだけ地位が不安定になってしまうため、裁判官が独立して自由に判断を行うにあたり困難を伴うことが考えられる。

韓国法から考える、近年の日韓関係の齟齬について

これにつても

なんだかなあ。

なわけです。

つまり裁判所は、そもそも根本的に独立して自由に判断を行えないと言っているわけで・・・・・

この方は、

以上のように、近年の日韓の齟齬をみると、日本が韓国の法体系を理解していれば少しでも状況を改善できたようにも思われる

韓国法から考える、近年の日韓関係の齟齬について

というわけですが、これを知れば知るほど、いやいやと思うのが普通の人だと思うのですけど。

つまり国同士の約束は、簡単にひっくり返される、特に日本の統治に反対したい案件では、特にそれをするのを国是としており、裁判所はそもそも不安定で独立していない・・・・・。

こんな状況で、まともに話し合いが出来るという風に考えること自体が、不思議でなりません。

結局は、日本が韓国を統治していた過去がいけないんだと言われて終わりなわけです。

とすると、まともに話が出来るのは、そういった過去を忘れた後となるわけで・・・・・・どうしてその間、うまくオープンに付き合うとしているのか、意味が分かりません。

もっともこんな杓子定規なことを言っていると、国境間のコミュニケーションなんて取れないし、それこそ長く長く尾を引くんでしょうから、積極的に交流して、こういう情報も飛び交って、理解していくんだとかいう前向きな人も多数いるんでしょうけれど・・・・・

でも個人的には、

なんだかなあ。

政治,法律

Posted by ymo