相続財産管理人と破産管財人と特別代理人

あまり一般の方は聞き慣れない言葉ですが・・・・ちょっと面白かったので、書いてみました。

とある不動産の所有権者が死去しました。

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しかしながら、その所有権者の方は、借金がたくさんありましたので、誰も相続する方がいませんでした。(娘さんは相続放棄をしました。)

不動産の所有権者が死去すると、普通は相続があり、相続人に登記を変更します。しかしこういう場合、だれも相続しません。そうすると、死亡した方がずっと所有権者として残ります。そして、その不動産についての権利関係を動かそうとする方がいなければずっとそのままになります。

不動産関係の仕事をしていると、思いの他、その不動産が死んだ人の名義のままになっていることに出くわします。それはそれで面白いのですが・・・・・

で、この話のように、借金がたくさんあったりすると、債権者がその不動産を放置しておきません。さりとて、所有権者が死んでいるので、その土地を売ることも出来ません。(まあ、正確には不動産の強制競売にかけるのですが)

 

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そんな時に出てくるのが、「相続財産管理人」です。

相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の管理人を選任します。
 相続財産管理人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
 なお,特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。

 つまり簡単に言えば、不動産の権利者がいないので、その権利者の代わりをする人を国(裁判所)が弁護士に委任するのです。
その際の弁護士費用は、相続財産管理人を立てれくれよとお願いする債権者が払います。

相続財産管理人を立ててくれよとお願いする債権者は、当然お金を少しでも回収したいから、相続財産管理人の選定をお金を払ってでもします。

ところが、相続財産管理人が選定されると、債権者が一斉に名乗りをあげます。そりゃ、諦めていた債権が少しでも回収できる見込みが出てくるわけですから。その結果、債権者が多数いて、その全ての債権を払うほど、財産(まあほとんど不動産・預貯金ですが)がないとわかると、相続財産管理人は、破産申立をします。

簡単に言えば、相続財産管理人が債権が多すぎるから、ギブアップしちゃうわけです。
で、どうなるかと言えば、次に破産管財人がその不動産の所有権者の代わりになります。

破産管財人(はさんかんざいにん)とは、破産法の破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう(同法第2条第12項)。 法人が破産した場合、破産管財人の氏名のほか、所属する法律事務所とその所在地が登記事項とされており、大規模な破産事件においては複数の破産管財人が選任されることもある。通常は弁護士がその任に当たる。

破産管財人といいますが、これもまた弁護士の先生がなります。

面白いのは、相続財産管理人も裁判所が選定した弁護士、破産管財人も裁判所が選定した弁護士、同じ弁護士なのに、いちいち違う弁護士の先生がやるということです。同じ弁護士の先生も良いと思いますが、そこは一応公平性を担保しているんでしょうか?違う弁護士の先生がやります。

破産管財人の先生は、あるだけの財産をどのように分配するかを考え、処理します。

処理したあとは、破産管財人の先生も、破産終決を宣言して、担当を降ります。(この辺はちゃんと不動産の登記簿に出てきます。)

で、更に面白いのは、破産管財人は、不動産を基本的には処分、つまり誰かに売却して少しでも債権者に配当を払ってあげようとしますが、売れない不動産もあるわけです。

売れない不動産は、どうなるかと言えば、誰も所有権者がいなくなります。

この辺がいまいち納得出来ないのですが、この不動産は所有権者がいなくなったのだから、国に帰属しちゃいそうなものですが、実はそうなりません。

相続財産管理人がそういった売れなかった不動産を「放棄」しちゃうことがあります。

そして放棄されちゃった不動産に対して、何かをしたい場合はどうなるか。
例えば、その不動産を借りている人がいて、権利関係が複雑だから賃料を裁判所に供託していて、その賃料を差し押さえている人が裁判所から、供託された賃料をもらっていたなんてことがあると、裁判所は杓子定規ですから、所有権者のいない不動産の賃料を動かすわけにはいかなくなってしまいます。

ああ、書くとややこしい。

そうした場合、裁判所は放棄された不動産について、その権利者を立ててくれと言ってきます。

ところが、相続財産管理人が諦めて、破産管財人が作業をしてしまった、言ってみれば残りカスのような不動産に、改めて相続財産管理人を選定するなんてことは、おかしな話になるようです。

そこで裁判所は特別代理人を立ててくれと言ってきます。

特別代理人(とくべつだいりにん)とは、本来の代理人が代理権を行使することができない(代理人の破産など)又は不適切な場合(利益相反行為など(826条、860条))に、裁判所に申し立てて選任してもらう特別な代理人のこと(b:民事訴訟法第35条、民事執行法第41条、刑事訴訟法第29条など)。

誰が考えたのか苦肉の策のようで、その人はほとんどすることはないので、wikiにも「特別代理人の仕事は当該執行裁判所からの書類を受け取るだけであり、法律的に体裁を整えている感は否めないともいわれる」と書いてあるように、とにかくアリバイ作りのような仕事になっているようです。

でもこれも弁護士の仕事。面白いですよね。ぐるぐる回っていて。

 

 

 

法律

Posted by ymo