家族経営と法人ー定款

2020年6月21日

法人は、登記して初めて効力を発揮します。
登記事項ですから、色々とルールがあります。
その「色々と」が問題になります。

お父さんが法人を設立しました。(有限会社、いまは法律名称は特例有限会社というそうですが。)
設立当初は、お母さんと取締役は2名でした。
息子が大人になりました。
息子が会社に入りました。
息子が取締役、そして代表取締役になりました。
お父さん、お母さんはかなりご高齢になり、息子と揉めるようになりました。
お父さんは、会社の取締役を退任。
会社に資産はあまりなく、土地・建物はお父さんとお母さんの名義。

それでも会社が儲かっているうちは良かったのですが、会社が傾き、経営が成り立たなくなってきて、困ったのは息子さんです。

法人の代表取締役です。
銀行融資の連帯保証人にもなっています。
でも、土地・建物は自分で勝手に処分できず、お父さんとお母さんと話も合いません。

もう、こんな会社の代表取締役なんて辞めたい・・・・。

ところが、実務は中心でやっていましたが、会社登記は親にまかせっきりで、会社の定款を見たことがありませんでした。

さて、こんな時に、この息子さんは、親の承諾なしに、この会社の代表取締役と取締役を辞任できるでしょうか?

実務的には、銀行から融資を受けていて、代表取締役、つまり息子さんが連帯保証人になっている段階で、辞任することはできないでしょう。
但し、銀行融資についても、返済が滞っていて、あとは親名義の土地・建物が競売人になるかどうか、息子さんにも保証人として債務が降りてくるかどうか、という段階であれば、銀行の言うことを聞く必要もないかもしれません。

で、結論ですが、残念ながら、取締役である母親の押印なくしては、登記申請できません。

これについて順を追って考えてみたいと思います。

特例有限会社で代表取締役が登記されている場合、おおむね3つのパターンに分かれるそうです。

①2名以上の取締役の中から、定款をもって、代表取締役を定めた場合
(定款の変更が必要となり、これは株主総会決議が必要)

②2名以上の取締役の中から、定款の定めに基づく取締役の互選をよって、代表取締役を定めた場合

③2名以上の取締役の中から、株主総会の決議によって、代表取締役を定めた場合

ところが、今回、息子さんが仮に取締役からも辞任するとすると、取締役はお母さん一人となります。

その場合は、代表取締役に就任せずに、取締役のまま、代表権を持つことになるそうです。

でもここで話は横道にそれますが、代表取締役が登記されているということは、上記の①または②の可能性、すなわち定款に記載されている可能性があり、取締役が1名になってしまうのは、矛盾していると思うのですが・・・・・・

で、息子さんが取締役からも辞任する場合の登記申請に必要な書類および印鑑は、

A)辞任届・・・・・・・・法人印
B)委任状・・・・・・・・法人印
C)印鑑(改印)届書・・・新代表者個人の実印と印鑑証明

となりまして、この場合は、お母さんの実印と印鑑証明書の添付が必要になってしまいます。

昔、かなり以前、何年前かは覚えていませんが、まだ印鑑(改印)届書が必要なかった時代だと、登記できてしまったかもしれませんが・・・・・・

それにしてもです。

定款がなくなってもなんとかなるんですよ。

法務局の登記申請ではいちいち定款の確認をしません。

それって、なんか変ですよね。

なんだかなあ。

まあ、この件は類似で、前にも書いたんですけどね。

定款の謎・定款ってなくなっても困らない? | なんだかなあと思う世界

定款(ていかん)とは、社団法人(会社・公益法人・協同組合等)および財団法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規則そのもの(実質的意義の定款)、およびその内容を紙や電子媒体に記録したもの(形式的意義の定款)である。 さて、みなさんの中で、定款そのものを見たことがある方は、どれくらいいるでしょうか? …

で、今回の話は、ここ↓を参考にさせてもらいました。
かなり実務的な内容が詳しく書いてあり、参考になりました。

有限会社の社長(代表取締役)の交代

私なんか、最初、お母さんの印鑑はなくても登記できるかなとか思ってしまいました。

法律

Posted by ymo