相続のやり直し

なんでこんな話になっているかというと、

Aさん 
親の代からの商売をついで、法人経営。
不動産をいくつか所有(親から相続

月並みですが、経営が傾いてきて、借金と不動産の価値を計算すると、不動産を全部叩き売って、少し現金が残る位
ところが、妹から「私が(遺産分割で)もらうはずだったお金、お兄ちゃん使い込んじゃったでしょ。」とごねられている

なんだかなあ。

で、不動産は、全部Aさんが相続したんだけど、一部の不動産を、使い込んじゃった引き替えに、今更差し出せないかなと・・・・。

結論から言うと、相続(遺産分割協議)のやり直し可能なんだそうです。

民法:第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

遺産分割のやり直しを禁止する法律は、特にないため、やり直し自体は特に問題ないそうです。

但し、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、やり直しをする際にも全員の合意が必要となるんだそうな。

Aさんの場合は、Aさんと妹しか相続人がいないそうだから、合意は簡単だな。

ただ、問題は、税務上は遺産分割のやり直しという概念がなく、各相続人間での財産の譲渡や贈与、交換があったものとして所得税や贈与税の課税をされることになるそうなので、実際には、不動産のやり取りは、税務署に捕捉される可能性が大きいので、ちょっと難しそう。

相続ならかなりの部分は、控除されるけど、これから再度遺産分割をやり直すとすると、贈与税がかかってしまう。

贈与税って税率高いんだよね。

で、贈与税で課税されないようにするためには、当初の遺産分割協議が無効であったことにしなければならない。

その場合は、税務的には相続の修正申告となる。
相続税の修正申告にしたって、そっちの方が税金がかかる場合もあるんだろうけど。
それに、一度目の相続の時の不動産登記でかかった登録免許税や不動産取得税は、戻ってこないし、今度新しく登記すれば、また登録免許税や不動産取得税かかっちゃう。

そもそも当初の遺産分割協議を無効とする可能性は次の3つの可能性があるそうだが、判例上はなかなか認められないらしい。

(1)共同相続人の一部を除外して行われた遺産分割協議
(2)精神上の障害により判断能力のない相続人が加わって行われた遺産分割協議
(3)遺産分割の意思表示に錯誤があったとき

そりゃそうだよな。

遺産分割協議で、相続人が全員で印鑑を押して、相続したのに、やっぱり間違ってましたなんて、なかなか裁判所も認めないよな。

このAさんの場合は、素直に、妹に渡すべき財産をAさんが使い込んでしまったことで、妹がAさんを相手に訴訟を起こして、不動産を賠償金としてもらえばよいと思うのですが・・・・・

相続財産を、一部の相続人が使い込んでしまって、他の相続人が訴えることは、よくあるケースのようで、相続財産が残っていれば、訴訟により取り戻すことは、比較的可能なようです。

もちろん、妹に渡すべき財産を使い込んでしまったという証拠は必要でしょうけれど。

ちなみに、使い込まれた遺産を請求することは、法律上の「不当利益返還請求」(時効10年)もしくは「損害賠償請求」(時効3年)にあたるそうなので、10年以内に裁判を起こせば、なんとかなるでしょう。

Aさんの場合は、まだ相続してから3年も経過していないので、双方合意の上、裁判にしてしまえば、判決も比較的(争う場合より)すぐに出るでしょうし。

損害賠償なら、税金(所得税・贈与税)もかかりませんしね。

法律

Posted by ymo