税金対策-保険

仕事がら、節税・脱税について、調査研究を日夜重ねております。
今回は「保険」です。
法人税-min
よく広告宣伝で、保険が節税対策になるなんていうのがあります。
でも、これこそ、誇大広告で取り締まった方が良いと思うのです。
情報源: 不当景品類及び不当表示防止法 – Wikipedia
もちろん使い方ですから、よく理解して使えば、節税になるのでしょうけれど・・・・・・
(まあ、なんでもそうだって言われると、終わっちゃうんですけどね。)

なんだかなあ。

 
法人向けの保険については、様々なものがありますので、私の知らない世界があったら、是非教えてほしいのですけれど・・・・・
 
で、結論から言うと、

黒字続きではなくて、保険契約期間中、例えば5年とか10年とかの間に、赤字の年が出ると、節税対策になる可能性が高い

という風に詳細に説明してあげるべきだと思うのです。
 
保険会社が言っているのは、保険料を払っている期間は節税になりますというものです。
例えば、保険料が全額損金として計上できるプランだとして、
年間利益が1000万円、保険料が1000万円なら、当然利益が0円になりますので、その年の法人税も0円になります。
これだけを取れば、なんてすばらしいんでしょうということになりますが、別に保険料はただ預かってもらっているわけではなく、保険会社の利益が抜かれます。
つまり解約返戻時(もどってくる時)は、一定の割合しか戻ってきません。
しかも、戻ってきた時には、所得として、結局は税金が課せられます。
とあるプランでは、5年契約の解約返戻金が80%だそうです。
つまあり5年で5000万円払って、戻ってくるのは4200万円、800万円は保険会社に行き、4200万円は税金が結局課税されるのです。
で、計算すると、普通に税金を払っている方が現金は残るということになります。
名称未設定-1
で、次に保険会社が提案するのが、保険料の50%が損金となり、50%は資産として保険会社が預かるという商品です。
この場合、解約返戻金の割合が高くなりますよというのが、保険会社の売りです。
でもこれにしても、結果はほぼ同じとなります。
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この計算を見てもらえばわかるのですが、保険会社に預けている金額は増えるわけで、会社のキャッシュフローは厳しくなりますし、結果として全額損金の場合よりは確かにお金は戻ってきますが、最終的には税金で素直に払っていた方が良いことになります。
 
で、次に保険会社が提案するのが、このタイプで、5年目に、個人(役員)へこの保険を譲渡すれば、解約返戻金は個人取得として、しかも一時所得だから課税額は2分の1となるので、お得ですよってな商品を提案してきます。
でもこれも計算してみると、結局、素直に税金を払った方が良いのです。
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まあ、かなり素直に税金を払った場合に近づきますけど、まだ逆転はしません。
 
つまりですね。
保険を使った節税策というのは、先延ばしなんです。延命策です。
他にも解約しないで、その分お金を借りておけば、所得として課税されないということも解説されていたりしますが、それにしても金利を払うので、やはり実質的には目減りです。
で、更にこの保険での節税には、リスクが常に付きまとうと思うのです。
 
①5年契約なら4年目までに大赤字をくらい、保険料が支払えくなる可能性
②5年契約で5年以内に、税制が変わるリスク
③(これはネットに書いてあったので、不確かですが)そもそも個別保険商品についての損金算入を税務署が公式に認めているわけではないので、税務署の解釈論によって、商品によっては、損金算入が保険会社の説明通り認められないリスク
 
これらのリスクを十分に踏まえた上で、5年以内には必ず赤字の年がやってくるので、欠損金の繰越控除と複合して、しかも5年契約なら5年間の勝負で、税制を含めた環境変化がないという賭けを踏まえて、対策して、初めて対策と言えると思うのです。

なんだかなあ。

でも・・・・でもですよ。
今年の黒字額の調整が出来ない位ですから、5年以内の赤字の見込みなんて見通せるはずもないと思うのですが・・・・・
あとはシュミレーション次第ですが、
名称未設定-4
こんなパターンも考えられますので、まああながち無駄とも言えませんから、結局は今年以降どのような利益になるかという慎重な計算の上で成り立つ節税策と言えると思います。
まあ簡単に考えれば、解約返戻金の戻り率の問題で、保険会社に抜かれ、さらに解約返戻金に課税されるのですから、よほど工夫しないとプラスにならないことは、明白ですね。
で、シュミレーションやっていて分かったのですが、

①契約期間は5年程度(解約返戻金の率が一番高くなる。)
②損金算入は50%パターン(解約返戻金の率が全額損金より高くなる。)
③5年目に個人に譲渡する。(解約返戻金は個人の所得として申告する。)
④5年以内に(できれば損金算入する総額程度の)赤字がある。

といった条件付きであれば、税金対策として使えるような気がします。
でもこれを理解して、5年契約で実行できる経営者はどれほどいるでしょうか?
ちょっと疑問です。
 
 
(これまで「税金対策」シリーズ 掲載)
第1回 税金対策-赤字会社を利用する
第2回 税金対策-未払費用の計上
第3回 税金対策-少額減価償却資産の一括費用計上
第4回 税金対策-欠損金の繰越控除
第5回 税金対策-企業版ふるさと納税制度

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Posted by ymo